賀露神社の麒麟獅子舞。因幡地方では約150の神社で麒麟獅子舞が行われています。その中でも賀露の麒麟獅子舞は漁師の町らしく勇壮で力強い舞いが特徴です。
因幡地方に伝わる伝統芸能「麒麟獅子舞」
鳥取県東部の因幡地方には、古くから「麒麟(きりん)獅子舞」と呼ばれる郷土芸能が伝わっています。これは中国の伝説上の聖獣である「麒麟」をモチーフにした1本の角を持つ獅子頭に赤または緑のかやで胴体をつくり、頭と尾の部分に2人が入って舞うもので、全国でも因幡地方のみに見られる珍しい獅子舞です。
この獅子舞は江戸時代のはじめに、初代藩主の池田光仲(みつなか)が曾祖父の徳川家康の分霊を祀(まつ)った因幡東照宮(現樗谿[おうちだに]神社)を創建した際に、祭礼の芸能として創始したと言われています。その後因幡地方の各地に伝播し、現在では鳥取県東部と兵庫県北部を中心に約150の神社で麒麟獅子舞が行われています。
麒麟獅子のあやし役猩々(しょうじょう)。初代藩主池田光仲が獅子舞に能の動きを取り入れたものといわれています。
通常、麒麟獅子舞はゆったりとした動きが一般的ですが、賀露神社の場合は、漁師の町らしく勇壮で力強い舞い方をするところに特徴があります。5拍子である囃(はや)しが4拍子であることや、通常あまり動かない後足が絶えず動いていること、また舞の中で力強く足を踏みならして大地の悪霊を鎮める「ドンゴドンゴ」と呼ばれる動作があることなどは、他の神社にはみられない、賀露神社特有の舞い方であるといわれています。
また、舞いの終盤には周りで見守っている大人たちが「オセヨー!」と声をかけます。「オセ」というのは賀露の方言で「おとな」という意味です。賀露の町では麒麟獅子舞が立派に舞えるようになって初めて氏子として認められるという伝統があります。「オセヨー!」というかけ声には「麒麟獅子舞が舞えるようになって一人前の氏子になったぞ!」という褒め言葉としての意味が込められているのです。
このように賀露神社の麒麟獅子舞は氏子の人々によって大切に継承されています。